Q&A  静電容量式膜厚計「アドミッタンスゲージ Model 278E」

Q1. 専用の測定台は必要ですか?

 

A1. アドミッタンスゲージの測定は、磁場の影響を受けるので測定台の考慮が必要です。 磁場の影響を受けると、試料を測定する都度測定値が大きく乱れることがあります。 例えば、一般的なSUS-303など鉄含有量が多い測定台では何らかの物を置いた時の衝撃 で磁場の乱れが発生することがあります。磁場の影響を回避するためには、本体を木箱等により20cm程度浮かすか、木製の測定台または、作業台として未使用の専用の測定台を使用することをお勧めします。また、近くに高圧線が通っている場合も磁界の影響により測定値が乱れることがあります。このような場合は測定場所を変更することで改善します。

Q2. 校正証明書の提出はできますか?

 

A2. アドミッタンスゲージは、弊社独自の静電容量式膜厚方法は汎用性がなく、JIS規格がありません。ISO認証に弊社の試験方法が明確に示されておれば問題ないことを確認しております。当社のアドミッタンスゲージは、()日本品質保証機構から校正証明書を受けたLCRメーター、ユニバーサルカウンター、ディジタルマルチメーターの機器を使用し試験成績表を添付しておりますが、校正証明が必要な場合は、弊社の校正機器を公定機関の校正証明書を付けて、有償で成績書を発行します。

 

Q3. 弊社独自の試験方法とは?

 

A3. アドミッタンスゲージの測定原理は静電容量値を膜厚に換算します。計測値の校正は最初に標準とする固定コンデンサーの容量を、LCRメーターで測定し、容量値に対応する膜厚に換算してコンデンサーの誤差を補正します。電極面積φ9.4mmプローブの場合、標準とする固定コンデンサーは82F5,600Fの6種を使用して直線性(精度±0.5%、±0.02digit)と再現性を確認するために同一コンデンサーで5回測定します。 

 

Q4. 測定単位に g/m2と質量法μmがありますが、何故ですか?

 

A4.の標準板作成によって重量法g/m2または質量法μmの区別するものです。

Q5. 電極φ9.4mmの時アルマイトの、2μm以下の測定はなぜ測定できませんか?

 

A5. アルマイト酸化膜における2μm以下の測定では、ポーラス(多孔質で小さな気泡が無数に空いている)があるため、静電容量式の測定では(ショート)と判断し0.3μm以下を表示します。0.3μmは電極φ9.4mmの測定範囲の下限値であり、0.3μm以下の表示の場合は、ショートまたは、ピンポールを意味します。

Q6. ショートの意味は、どのような事ですか?

 

A6. 塗膜の測定では0.30μm以下の測定は無意味だと判断しております。今後の製品開発では、0.30 μm以下は「Short」という表示になるようにしていきます。

Q7.プローブ電極面積φ2.0mm、1本で全ての膜厚測定をカバーできませんか?

 

A7. 膜厚は均一性が得にくい点があるため、可能な限り電極面積の大きいほうが、正確なデーターが得られます。面積の小さいプローブは、直線性と再現性は犠牲になりますが局所部分を測定したい場合に使用します。また、小口径の電極は弾力が弱く、強い圧力で押し付けると、ゴム変形による電極面積の変動のために、測定誤差が増加する傾向があります。φ2.0mm電極の採用希望に対してはデモまたは貸出品で確認してください。

Q8. 標準プローブは、どのようなものですか?

 

A8. 標準プローブはPOM黒製で、電極径はφ9.4mmです。試験片は平板(0.10.3mm)用のシーソー式測定治具で、導電性ゴム電極が試験片と水平になるように設計されています。導電性ゴム電極とシャフト間を絶縁して、シャフトと絶縁部内部に信号ケーブを入線して、スプリングコンタクトで導電性ゴム電極との接続をします。構造は複雑になりますが、浮遊容量を最小にするとともに誘導を防止する効果があります。

ワニ口クリップで試料台に置いた試験片の金属部分と接続後、ストッパーを外し、プローブ握り手を押し下げて、先端部の導電性ゴム電極を持ち上げます。プローブ握り手を開放するとスプリングにより導電性ゴム電極が試験片を圧縮して測定が可能となります。

Q9. AUTO 測定について教えてください。

 

A9. 測定のタイミングが一定するように、プローブハンドルを開放すると、膜厚に応じ電圧が上昇していきます。上昇過程でトリガー電圧を初期設定しており、トリガー 電圧を超えるとADコンバーターのスタート信号が入り0.25 秒後、10回測定の平均値電圧を膜厚に換算表示します。

Q10. FREE測定について教えてください。

 

A10. 連続測定法で、プローブハンドルを開放すると、膜厚に応じ電圧が上昇していきその過程をリアルタイムで膜厚表示します。スプリングにより導電性ゴムが圧縮される過程でゴム電極の面積や体積固有抵抗が安定するまで、表示膜厚が徐々に低くなります。FREE測定においては測定値が安定するまでに数秒かかります。このため測定スキルの確立までは、基本的にAUTO測定を推奨しています。

Q11. 特徴に素地板厚に影響しないとありますが本当でしょうか?

 

A11. 標準プローブは、0.1~0.3mm の試験片専用です。厚板での測定は水平度の変化による誤差があり、補正が必要です。例として同じ10μm塗膜厚の2mmと5mmの試験片を使用する場合、5mm厚が低く表示されます。これは水平度の差による接触面積が2mmより5mmのほうが小さくなるためです。2mmまたは5mmなどの厚みのある試験片を測定する場合は、標準板での補正か (チャンネルNo.変更)試料台の高さを変更して対応します。測定の都度試験片板厚が大きく変わる場合は、ハンドプローブをお勧めします。ハンドプローブ測定では、試験片の金属部と通電できれば、板厚に関係なく測定ができます。

Q12. 導電性ゴム電極について

 

A12. 0.01μm単位の測定は、導電性ゴムの影響を強く受けます。導電ゴムはシリコンをベースにカーボンが混合されていますので、カーボン含有量により弾力性と通電性がトレードオフの関係にあります。測定時に導電ゴムを圧縮するとカーボン密度が高くなることでゴムの固有抵抗が低くなり、電流が流れ易くなることで膜厚値は低くなります。このため、精度の確保(ゴムの圧縮状態から復元)には測定間隔を5秒以上が必要です。すなわち、実測時、同一個所をAutoで5秒以下の間隔で繰り返し測定すると、最終桁のバラツキが大きくなります。この原因はアドミッタンスゲージの分解能が0.01μmと高いために生じるものです。

Q13. 導電性ゴム電極は、圧縮・復元に問題があるようですが、金属製電極に変更するとどうなりますか?

 

A13. 素地と金属製電極の密着性が確保できず、隙間に空気層が存在することで測定に悪影響するので測定値が安定しません。

Q14. 検量線(リニアライザー)εr補正とは?

 

A14. 塗膜の合成誘電率(εr)は未知なので質量法(μm)か重量法(g/m2)で作成された正確な標準板1枚で、容量対膜厚の関係は、相関関係にあり膜厚の係数が把握できます。具体的には、標準板を測定すると測定した数値を表示します。標準板の数値をテンーで入力設定を終了すると、誘電率εrを本体内蔵のCPUが逆算します。

Q15. 検量線補正(リニアライザー)とは?

 

A15. ユーザー設定チャンネルCH.1CH.20にはそれぞれ標準板が10()まで補正が可能です。同一種類で膜厚の異なる標準板を2枚以上お持ちの場合、1枚目の標準板を、測定すると測定した数値を表示します。標準板の数値をテンキーで入力して1枚目の設定を終了する。2枚目の既知標準板も同様な操作をします。2枚目で終了の場合は並び替えをして、ランダム校正から膜厚の厚い順にソートして終了する。補正式y=ax+b2点間の直線補正を、標準板校正した数まで補正を行います。

Q16.試験片を測定すると、膜厚測定値の変動が大きい – 1

 

A16.試験片をプローブの測定台に乗せて測定時に試験片の同一箇所を測定できておれば殆ど問題はないはずですが、測定箇所がずれると膜厚測定値の変動が大きくなることがあります。その場合試験片の裏側に両面テープを張り、試験台に固定して同じ場所を5秒以上あけて(Q12の問題あり)再現性を確認してください。試験片の塗膜分布状態により再現性が±××.××μm 以内と明確な表記は出来ませんが、両面テープで固定しても膜厚測定値の変動が大きい場合は、膜厚計本体の原因と考えられます。ご一報ください。

Q17. 試験片を測定すると、膜厚測定値の変動が大きい – 2

 

A17.アクリル系塗料の場合は問題ありませんが、塗料に導電性物質例えば、「カーボン」「酸化亜鉛」「チタン」「アルミ」等を含有した塗料が増加しています。このような塗料には導電性物質が含まれていますので塗膜を測定すると、Q12同様導電性物質により電流が流れやすくなり、膜厚は薄く表示します。また、測定値の変動が大きくなりますのでご注意ください。